異動になった。
入社してまだ半年未満の九月一日からとの話だった。
確かに失敗ばかりした。毎日先輩に怒られて、上司に怒られて。課長とか部長とか執行役員とか全然顔合わせたことのない、なんかよくわからないもっと偉い人にも怒られた。
それでも二度と怒られないように細心の注意を払って、少しずつ慣れたと思ったら。
「この業界の異動は多いから」
入社してすぐの顔合わせからまだ二回しか会ってない、よくわからない上司から告げられた。そういえば今日は上司と目が合わなかった。不意にそらされていて、今思えば気まずかったのかもしれない。
「次のところはめちゃくちゃ優しい人だから大切にしてもらえると思うよ」
その言葉に、なぜか私は一筋の涙を流していた。自分でもなぜ泣いているのかわからない。頑張ろうと決意した矢先に出鼻を挫かれたからか。それともようやくこの地獄から抜けられるからか。
「次のところで頑張ろうね」
投げかけられた言葉に、「はい」と返事しながら頷いた。
それが地獄の悪循環に繋がるとは知らなかった。
『不条理』
3/19/2024, 5:44:42 AM