なつかしい夢を見た。
もう会えない人の夢を見た。
目が覚めた私は天井を見つめて、しばらくぼう然とした。
夢の中の、胸が優しくしめつけられるような暖かさと、冷たい現実の温度差にしばらく何も考えられなかった。
もう一度目を閉じて、同じ世界に帰れるならいくらだってそうしたけど、私は布団を抜け出して、冬のフローリングに立つ。
今からどんなに粘ったところで、同じ夢は見られないだろう。
私はこの上なくはっきりと、あの人が死んだことを思い出してしまった。
もう同じ空の下にあの人はいない。同じ空気を吸ってもいない。どこか遠くで頑張ってもくれない。
あの日笑ってくれた顔も、握ってくれた手だって、もうとっくの昔に骨になった。
骨壺をひっくり返したって、どれがどこの骨かなんて私に分かりはしないのだ。
私はベッドから起き上がって、洗面所で顔を洗い、朝ご飯を食べる。それから仕事にいって、ほどほどに働いて、帰って、また、眠る。
日常を繰り返して、その中で私は少しずつあの人を忘れていく。
そして、あの人が死んだってうっかり忘れたその夜に、また夢であの人に会いたい。
2/2/2024, 5:32:21 PM