海へ。海外へ。
「なあ、海外だってよ、信じられる?」
「信じるも何も、今のこれが現実だろ?」
俺と友人の海人は飛行機に乗って海を渡っている。窓際から見える地上はとても大きくて少し怖いと思う程だ。
俺達は飛行機に乗って、レースをする会場へと向かっている。モータースポーツの一つ、ラリーを知っているだろうか?
道路や砂利道などの一般道を猛スピードで駆け抜けていくモーター競技だ。
知らない人は是非、調べてほしい。俺達はこれから全日本ラリーの大会に出場する。
全日本なのに海外?とは思わないでほしい。
「……俺、いつまでお前と組んでられるかな……」
「はあ、何いってんだよ海人。ずっと組むに決まってんだろ」
「どうかな?お前はともかく、俺は凡人だからさ…」
「…いい加減にしねーと、俺キレるぜ」
「怒んなよっ、でも、事実じゃんかっ」
「海人と組めくなるなんて想像してない。」
レースを重ねるごとにポイントがつき、順位が出る。その年間のポイントが一位になれば、ラリーの最高峰WRCの道が開けるかもしれない。けれどそれは、俺と海人の道へ進むことになるかもしれないという事でもあるのだ。
「ずっと海人としてきたんだ。これからだって二人でするんだよっ」
「はいはい。慰めでも嬉しいよ」
「なぐさめなんかじゃないっ!」
「わかった。わかったから」
海人はそれ以上何も言わなかった。
静かに窓の外の景色を眺めている。
俺は、何だが沸騰した熱がまだ熱を帯びている様で体が少し火照っているものの、頭は冷静だった。
決して楽しい会話をしていた訳では無いが、俺は最後まで海人と共に進みたい。
そう、海を渡る飛行機の中で改めて思った。
叶うか叶わないかは、別としても……。
8/23/2023, 11:31:23 AM