お痒

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逆さまに見えた。

エメラルドの双眸から覗く見慣れた深淵は反転している。

風切り音が肌を、脳を、全てを切り裂いて行く。

全身が音を立てて崩れ去り、秋らしい寒風に流されて魂ごとぜんぶなくなる。なくなっていく。

双眸から覗く愛すべき世界は、赤々しく染まり、僕の視界を染めきった。

鼻を刺す鉄の匂いがどうしてか心地良い。

もう見えない現世に安堵して、僕は眠りについた。

<逆さま>

12/6/2023, 10:27:12 AM