とある恋人たちの日常。

Open App

「今日は晴れましたね」
 
 恋人が窓際に立って、空を見上げる。
 俺は彼女に寄り添って同じ方向を向いた。
 
「本当だね。あ、短冊書く?」
「あ、書きます」
 
 自宅に小さな七夕飾りを用意してあり、短冊を彼女に渡した。
 俺も短冊にペンを走らせる。
 
「そう言えば、晴れて欲しくなかったの?」
「え?」
 
 彼女も短冊に書いていた手を止めて、俺を見つめる。
 ほんの少し、寂しそうな顔をしてから短冊を書き進めた。視線を短冊に向けたまま返答してくれた。
 
「楽しくないというか……一年に一度しか会えないなら、二人っきりにしてあげたいなって……」
 
 ああ、なるほど。
 確かになと、考えてしまう。
 
 恋人と一年に一度しか会えないんだから、誰にも邪魔されたくないよな。
 
 そんなふうに考えていると、俺の手の上に彼女の手が添えられた。
 
「私は一年に一度なんて嫌ですよ?」
 
 挑戦的に見えるけれど、その奥に寂しさの色が見える。
 
 俺は立ち上がって彼女を抱き寄せた。
 
「俺だって嫌だよ。ずっとそばにいてね」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:七夕

7/7/2024, 11:50:10 AM