たなか。

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【心の灯火】

心の灯火が消える前に。そう思って、この文章を書き始めた。この文章を読んでいる人は僕と違う世界の人かもしれない。それとも、僕と同じ世界の人かな。いや、そんなことはどうでも良くて。
「もうすぐいなくなるんだもんな。」
そう、この先決して長くはありません。そんな僕が急に思い立った訳。それは、好きな人がいるからです。いずれ会えなくなるのならば、と。手紙は恥ずかしかったので誰に宛てるわけでもない。そんな文章を綴ろうと思いました。単刀直入に言わせてください。惚気になるしそうでないかもしれない。
「大好きだ。」
愛していた、そんなふうに思ったんです。初めて会った時はなんか、人に気ばっか使って自分のことおかまいなしのお人好しで身を滅ぼす馬鹿なヤツそんなふうに思ってました。
「我ながら、酷いなこれ。」
今も思い出しては笑いが込み上げてくるほどだ。そんな僕だって周りの目ばかり気にしていたのに。一緒にいる時間が長くなってくるにつれてこの人のこういうところ素敵だなって部分が増えたんです。一部を抜粋していくと笑顔が可愛い、歌が上手い、誰かに寄り添える、一緒にいる人と最高に楽しめる、話が面白い、とか。とにかく、素敵な人なんです。僕がいなくなってしまう前に。誰かに伝えてみたかった。なんでそれを想い人に伝えないかってのはやっぱり恥ずかしさが勝ってしまうんですよね。
「僕なんて、柄でもない。」
あえて、丁寧な口調で書いていますが書いてる時に何度も手は震えるし普段こんな口調は使わないから違和感ばかり。字ってちゃんと書こうとするとこんなに震えるんだな、って字を書く人たちを尊敬するレベルだ。元から字が汚い、なんて僕の話は置いておいて。この文章を読んでいる人も今大切にしたい人や好きな人がいるのなら真っ当に突っ走ってください。僕はそれが出来なかった。それで、今たくさんたくさん後悔して結局天罰だ。だから、伝えて言えないままにならないで。
「紙、滲まないようにしなきゃな。」
これを読んだ人と僕だけの秘密。僕はあの人が好きで大切でちゃんと愛してあげたかった。言えない僕の後悔を他の誰かが知る必要は無い、だからちゃんと好きになって。
「お邪魔しまーす!」
「あれ、もうそんな時間?」
俺はそっと文章を閉まって家の鍵を閉めた。

9/2/2023, 10:23:29 AM