小絲さなこ

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「二十キロ」


雷が聞こえる。
毎日のように聞こえてくる空の音は、たいていあの山の辺りから。

街の雷と山の雷の音は違う。
昔はそれが実感出来たけど、ここ数年はその差が縮まっている気がする。

「ひと雨ほしいねー」

パートのおばさまが空を見上げて呟く。

スマートフォンに大雨注意報の通知。
雨雲が接近中。


「でも、たいていこっちには来ないんだよ」

ここは、護られている街だから。
なぜかぽっかりと雨雲が避けていく。

「たいてい、降ったとしても夜中だよね」

午後四時。気温三十二度。
予報は今日も当たらない。


────遠雷
2025.08.23.

8/23/2025, 12:28:01 PM