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文学とは。
そもそも文学とは簡単に、言語によって表現される芸術作品のことを表す。
ところで文学は何故誕生してしまったのか。
古代の人々は自分の思想や趣を綴ることに何を求めたのだろう。
高揚か、享楽か、或いは優越感か。

さあ文学王国にお住みの皆さん、はじめまして。
そうですね、この国では自称を「訪問者」にでもしましょうか。
まず、文字をなぞることがお好きですね?
細ければ細かいほど、長ければ長いほど、けれど単調であってはつまらない、言葉にならないような感情に揺られ、ただひたすら流れるような文字の羅列に魅力を感じてしまう。
1種の病とも呼べる「それ」を好んでいますね?


ある年の夏。
まだ訪問者はランドセルを背負っていました。
家の大黒柱…青年としよう。
その青年と近くの書店まで足を運んだ時のこと。
本格的に文字を習って間もなかった当時の訪問者は当然、ちゃんと文学なんてものに触れたことはなかった。
(前述のように言語によって表現される芸術作品という括りで言ってしまうのなら国語の教科書であったり、なんなら絵本でさえももちろん文学に当てはまるのだが、これが文学だと意識するようになったのはあの夏以後のこと。)

そんな訪問者を見計らって青年が勧めてきたのは1冊の小説だった。
初めて文学に触れるには、とても向いていないというか。
挿絵もなく、文字も小さい1冊だった。
でも不思議とその訪問者は否定しなかったのである。
手に取ったその瞬間、未来を感じてしまった。
その頃からだろうか。
訪問者は文学に触れる、文字をなぞるという行為に取り憑かれてしまった。文学に触れれば、自分より何倍も世界を知る他者の人生を知ることができた。
まるで冒険だった。海の旅が終わったのなら山へ行こう。山での旅が終わったのなら宇宙へ行こう。文字の中でならヒーローになれた。夢があたかも簡単に叶うようだった。


ただ1つ。
訪問者ほ難点を見つけてしまった。

文字をなぞることに慣れてしまい、文字を綴ったことがないぞという事である。

これは大問題だ。
今すぐ解決すべき案件だ!!!

1/25/2023, 2:09:50 PM