相合傘
「じゃあ、また明日」
そう言って去っていった彼。
踵を返す時に、彼の右肩が少し濡れていた。
優しい彼のことだから、私が濡れないように傘をさしていてくれたんだと思うと、胸が熱くなり疼いた。
「あ、あのっ」
と思わず大きな声が出た。
彼がくるりと振り返り、不思議そうに首を傾げた。
「あ、ありがとうございます」
そんなありきたりなお礼しか言えなかったけれど、彼はにこりと笑って手を振った。
彼の表情が、声が、仕草がとても好きだ。
またいつか相合傘ができたなら、今度は彼の肩が濡れないように、もう少し近づいても許されるほどの距離感で…
6/19/2024, 12:31:54 PM