れいおう

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『ブランコをこいで』

学校に行くのが嫌になった時はいつも公園に行く。学校への通学路から脇道に逸れて離れた所にある公園に行く。高校生くらいの子供が制服を着たまま平日に公園にいるという異様な光景がたびたび目撃されるのはそのためだ。
今日も学校に行きたくなくなり通学の途中で公園へとかじを切る。学校には遅刻の連絡をいれる。いつも僕はブランコをこいで時間を潰す。無心でただひたすら足を曲げ伸ばししていると段々と力が加わり、僕は前に後ろに揺れていく。そうやっていると、
「先客か?」
というような声が聞こえてきた。僕は思わずブランコを止め声のしてきた方を見る。するとそこには同じクラスの友達が立っていた。
「さぼり?」
と気になり聞いたが、もう一限がはじまっている時間だから当然そうだろう。
「まあ、そうなるか」
というふうな曖昧な答えを返すと、そのクラスメートは僕の隣のブランコに乗ってきた。暫くの沈黙の末、
「なんか一限遅刻しそうで途中で行くのもなって思って」
と話し出してきた。
「どうせならサボっちゃおっかなって」
サボる理由なんてそんなものでしかないだろう。特に話を続けることもできず、また沈黙が場を支配する。
「君はどうしたの?」
と沈黙が嫌なのかまた話しかけてきた。僕は思わず
「君と同じ感じだよ」
と答えてしまう。なぜ学校に行きたくなくなるのかは僕にもわからない。それにこんな事説明してもなんにもならないことは僕にもわかっている。
「ふーんそうか」
そのクラスメートは興味なさそうにそう返事すると、
「ブランコって最近あまりやらないな」
と言いながらブランコをこぎ始めた。僕もそれに追随してブランコをまたこぎ始める。普段関わりのないそのクラスメートとその時だけはなにか繋がりができたような気がした。
しばらくするとそのクラスメートがブランコをこぐのを止めてこう言い出した。
「そろそろ一限終わる時間だし学校行ってくるけど君も行くのか?」
と。今日はまだ行く気が起きないけどここで行かないというのもおかしいかなとか考えてしまい、
「うん」
と肯定の返事をしてしまう。
僕とそのクラスメートはブランコをおり学校に向かって歩き出した。
それは僕の小さな思い出。

2/1/2024, 10:03:35 PM