雑踏を、訳もなく歩く。
何十人、何百人とすれ違った中の一人。
見間違いだと思った。
けれどあれは。
息をのみ、振り向く。
騒音の中、同じようにこちらを振り向いていたその顔は。
死んだはずの相棒そっくりだった。
自分の中の、時間が止まる。
また顔を見られた喜びと、自分が見送ったはずの人間が生きてこの地に立っている戸惑いだけがそこにあった。
いや、でも。
「アイツ」は、自分が知っているのとは違う。
明らかに足りないものがあった。
きっと、他人の空似だろう。
にしても、あんなにそっくりなヤツがいるとは。
そう言い聞かせて、視線をそらしかけた。
その瞬間、「アイツ」の唇が動いた。
音は搔き消されて聞こえなかった。
けれど。あの動きは。間違いなく。
自分の名前を呼んでいた。
誰だ。誰?誰なんだよ?
お前は、一体、
【あなたは誰】
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A.並行世界から来た相棒
2/19/2025, 10:40:28 AM