ここは心地がいい。
暖かい日差し。
君が私の髪を撫でる感覚。
君の温もり。
本のページをめくる音。
シーツの柔軟剤の香りに、ほんの少しの太陽の匂い。
そこに混じる君の匂い。
無意識にここは心の底から安心できると思った。
微睡みの中で私は世界一の幸せ者だと。
もう少しこのままでいたい。
神様。
叶うのならばいっそ永遠に私を夢の中へといざなっておくれ。
夢が覚める前に君に伝えたいことがあるんだ。
君の顔に手を伸ばし言葉を紡ごうとした。
あぁ、夢から覚める感覚だ。
だめだ。
まだ、待って。
覚めたくない。
だが、どう足掻こうと無駄と言われるように現実へと連れ戻された。
今まであった日差しはとうに消え去ってあたりは暗闇に蝕まれていた。
暖かい日差しも。
髪を撫でる感覚も。
君の温もりも。
ページをめくる音も。
無くなってしまった。
無くなっていた。
もう、無いんだ。
無いんだ。
冷たいシーツを握りしめ私は泣いた。
どうしようも無い深い深い悲しみの中、ふと微かに匂ったのは柔軟剤の香りと微かな太陽の匂い。
その中に君の匂いが残っていた。
あぁ、君は本当にここにいたんだね。
あの日々は夢じゃなかったと、証明してくれているようだった。
この匂いもいつか消え去り私の元を離れていく。
君の声も君の体温も君の顔さえ時が経てば思い出せなくなるのかな。
私には無理だよ。
忘れたくない。
夢の中で君にまた会えるかな。
神様が本当にいるならきっとまた会わせてくれるはずだ。
だから、次は夢が覚める前に君に伝えるよ。
愛してると。
【夢が覚める前に】
3/23/2024, 2:33:52 PM