イオリ

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0からの

 スマホやPCを買い替えた時、使い方をまた1からの覚えなきゃな、と誰もが思うだろう。この場合、0から、という人はあまりいないのではないだろうか。

 機種は違えど、スマホ、PCあるいはその他の電子機器等の経験が全く無いわけではない。その経験の分が、無意識に0とは言わせないということではないだろうか。
 
 他にも、例えば似たような仕事に転職した場合も、また1から覚えます、という方が多いと思う。

 こう考えると、たとえ再スタートのきっかけが挫折だったとしても、0からの、ではなく、1からの、と口にした方が、経験があるから大丈夫、と自分に言い聞かせ、心持ちがだいぶ穏やかになるのではと思う。

 では、0からの、が常時そぐわない言葉かというとそうでもない。全く未経験のものの新鮮さを楽しもうと思えば、こちらのほうが良い。

 新しい挑戦、新しい趣味、新しい街等々。未経験、つまり0からだ。だが決してネガティブなイメージはない。むしろワクワクが際立つ。

 似たような言葉だけど、意識的に使い分けたほうが良さそうだ。


 という話を年上の彼女にした。

 私とはどっちなの。
 
 どっちとは。

 0から、それとも1から?


 恋は初めてじゃない。当然ながら。では先の理屈でいえば1からが答えか。だが、声が詰まる。不安が喉を締める。僕はとんでもない過ちを犯そうとしているのではないか。

 私は0から、よ。

 そうなのか。

 そう。1の経験、いらないから。彼女がきっと睨む。

 なんで悩むの。必要なの?今までの女。

 いいえ、と急いで答えた。僕も0から、です、と加えた。


 ゆめゆめ忘れてはならない。恋はいつでも0から。いや、いつでもというか、彼女に対しては、という意味だと伝えたほうが良いか。いや、あまりしゃべりすぎるとかえってまずくなる恐れが。

 さて、どうしようか。

 


 
 

2/21/2024, 9:46:42 PM