【遠い足音】
気づけば何と遠いところまで来ていたのか。
目の前は海だった。
何の変哲もないただの水の溜まり。
それなのに。
私は靴を脱ぐ。
一歩前に踏み出し
大声で叫んでいた。
陽は沈み周りには誰もいない。
それが余計に私の心を闇へと引きずり込んでいく。
そんな時後ろから駆けてくる足音が聞こえてきた。
そして私の身体は後ろから抱き締められる。
抵抗しても抗っても、その腕の強さは弱まることを知らない。
「もう、大丈夫だから」
その呟きと共に私は膝を崩して泣いていた。
背中から伝わる温もりを抱き締め
私は泣き続けた。
夜が、明ける。
私の世界が変わる音がした。
10/2/2025, 11:53:47 AM