『流れ星に願いを』
「星が、綺麗だなぁ」
俺、煌驥は行き慣れた公園のブランコに座り、1人で呟く。
今は幼馴染の小夜を待っている。綺麗で艶やかな黒髪。顔は小さく、整った目鼻立ち。誰にでも優しく、モテる。慣れている俺が見ても可愛すぎると思う。
正直、俺は小夜の事が好きだ。て言うかさ、あんな凄すぎる幼馴染が居て好きにならないと思う? いや、思わない(反語)。
「告白出来れば、早いんだろうけどなぁ」
そんな男前な事が出来れば、俺は陰キャをしていない。
「1人で何話してるの?」
「ワン!」
「え、なんで急に犬になったの?」
いきなり話しかけられて思わず犬になってしまった(?)。急に話しかけるのはやめてほしい。せめてノックくらい……ブランコにノックは意味ないか。
「いや、気にするな。ただ犬になりたくなっただけだ」
「精神科か脳外科紹介する?」
めっちゃ心配された。やめて、そんな呆れた目で俺を見ないで。
「ほ、ほら、もうそろそろ時間だぞ」
「あ、そう言えばその為に待ち合わせしたんだった」
「忘れるな忘れるな。お前が急にLINE送ってきたんだろ? しかもこんな深夜に」
「てへっ」
「許すわ。全然許す。余裕で許す」
「あまりにもチョロすぎじゃない?」
小夜の少し舌を出してあざといウインク、可愛すぎるだろうが。俺がチョロいんじゃない。……多分。
少し遅くなったが、俺たちが集まった理由は流れ星だ。俺達の街には年に1度、流れ星が流れる。それはとても綺麗で、更に通常の流れ星より遅い為、願いを3回言いやすい、らしい。
実はこれ、小夜から聞いた事なんだよね。俺、今まで家でゲームしてて見に行った事ないんだよ。
「何ぼーっとしてるの? もうそろそろ流れるよ?」
小夜が俺に近づいて顔を覗き込んで来た。
「え、わかるのか?」
「勿論。何回も見にきてるからね。ほら、3……2……1……」
次の瞬間、空に流れ星が輝く。それは噂の通りとても綺麗で、そして本当に願いを3回言えそうなほど遅い。なんでこんなに遅いんだろ?
「わぁ……綺麗……」
「本当にな。すげえ綺麗だ」
流れ星も綺麗だが、それよりも流れ星に見惚れている小夜も綺麗すぎる。
「いつか小夜に告白出来ますように」
小さく声に出し、3回唱える。陰キャが勇気を出し、俺のやるべき事を果たせるように強く願う。
5mほど遠くで小夜も願い事を言っているようだ。少し聞こえないかな……
「いつか煌驥に……されますように」
う〜ん、1番いい所が聞こえない。なんて非情な世界なんだ。許せないなぁ!
「何をお願いしたの?」
願い事を唱え終わったらしい。小夜が近づいてきた。
「少なくともお前に知られたら俺は泣き崩れて引きこもるだろうな。お前は?」
「何をお願いしたのか凄く気になるけど……まあそれはおいといて。私も秘密」
人差し指を口の前に添え、目を閉じてにこっと笑みを浮かべる。マジでもうそろそろ自重した方が良いと思うなぁ俺は! 勘違いシチャウゾ。
「え〜良いやん、言ってくれても。ねぇ〜」
「駄々をこねない。ほら、帰るよ」
そう言って小夜は帰路につく。俺も小夜と家が近いのでそれに続く。
みんなもこの街に来て見たらどうだい? それでは、良い流れ星ライフを!
4/26/2024, 3:40:58 AM