先程まで明るかった(と言っても夜空だが)空が、一気に暗くなる。
明るすぎる光の点滅が地上を照らした数秒後、低く唸るようなゴロゴロゴロ……という音。
そして再び、ビルのネオンより明るい光。
その光は、廃墟の端で息を潜める私の姿もくっきり映し出す。
地面に浮かび上がった己の影に、思わずびくりとしてしまった。
好奇心など出さなければ良かったのだ。
そう思っても後の祭り。
頬にポタ、と大きめの水滴が落ちてきた。
雨が 降るのか
濡れる前になんとかここを出たいが、出口が分からない。
おかしな話だと思うだろうが、私は本当に『どこから入った』のかも『どこから帰るのか』も分からない……というより知らないのだ。
気付いたらここに居て、アレに追いかけられたのだから。
そういえばアレはどこに行ったのだろう。
ポツリ
ポツリ
ポツ
だんだん雨粒が増えてきた。
土砂降りになるだろう。
このまま濡れるのも嫌だ。
とりあえずどこか屋根のあるところに…………
【み ィ つ ケ だぁぁ】
立ち上がった私の頭上からした、嬉しそうな声
あの時あんなモノを拾わなければ
前を歩くヒトを追いかけなければ
見たこともない駅で降りなければ
そうしたならば……
【ず ッ ト ずッと 】
【ソレほしほしほしか】
【コレ た べ タ うま カ タ】
そう言って口の中から伸ばされた手が見せてきたのは、
なーんだ。
あの時失くなった指じゃないか。
そうか
最初から決まっていたのかぁ
バクン
8/7/2024, 12:10:23 PM