りんご飴

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彼女は、皆に分け隔てなく優しかった。それが不思議でたまらなかった。何故、全員に優しく接するのか。好奇心のまま、凍えるような寒さの日、私は彼女にナイフを突き付ける。彼女は少し目を見開き、私に対して手を伸ばしてきた。
「なぜ、そんな事を?」
彼女の純粋な疑問。それに私は答えなかった。
ナイフを構える。寒さからか、微かに震える手を、必死に抑えた。彼女は、それでも私に笑いかけた。
「大丈夫。貴方は悪くないわ…」
彼女が私に近づいた。一歩、私は引く。
躊躇いなく彼女はナイフを私から取り、自身に突き刺した。
「え」
声が、漏れる。彼女はうめき声と共に、倒れ込んだ。駆け寄ると、実際はナイフを刺したように見えただけだった。好奇心が、呆れに変わる。彼女は聖母の様な微笑みをむけた。
「これが優しさか…」
そう、空虚に私は呟き、口角を上げた。私の不器用な笑みに、彼女は目を細める。
ある、冬の事だった。

1/27/2026, 10:41:15 AM