『無垢』
「次の秋祭りは絶対いく!」
そう豪語した彼は今にも飛び出しそうなくらいの勢いでLINEをしてきた。『わかったから笑』と送った彼女は今年はもう出番がない浴衣をしまい始めた。白無垢の綺麗な浴衣だ。彼女は今、自分の家にはいない。規則的に並んだベットが少し不気味だ。浴衣をしまうと言っても、小さいクローゼットだからシワにならないだろうか。そんなくだらないことを考えていた。手にはたくさんの管が彼女を現世に押しとどめるようについていた。
浴衣の出番が来ることを信じて彼女は眠りについた。
彼女がすべてを手放したのは彼の無垢な願いが叶う前だった。
5/31/2024, 4:23:12 PM