【正直】
まるで、生きながら𓏸𓏸してるみたいだ。
この世界には、魔法がある。それは、この国。……この世界の人にとっては当たり前で。
魔法学に薬草学。騎士団に、宮廷魔法士。
王族、貴族にエトセトラ。
私の元いた世界には、なかった文化だ。
……というか、個人的には化学が発展できなかった世界という認識の方が強い。
この世界に、転生。というより召喚に近いのかも知れない。……兎に角、気付いたら森の中。というテンプレを見事回収した私は、当時何かと焦っていた。
周りが見えてなかった。
自分が置かれてる立場を。
この世界の片隅に。
魔物に国政。跡取り問題。
凡を素で行く私の人生にはなかった世界。
わたしは兎に角、精一杯だったのだけ伝えたい。そして、信じて欲しい。切実に。
私は薬草取りに来ていたらしい子供と出会い、家に招待された。…普通、…というか元いた世界ではありえない話だ。…身元不明とか怖過ぎる。
天真爛漫に笑う少年。仲睦まじい少年の親。
心優しい、村の人達。
ここの人達は、私に色んなことを教えてくれた。
………そう、色々だ。とくに私が畏怖したのが、ポーションというものの存在だった。
聞くと、小さなか擦り傷から、視力や身体の欠損。病から、何まで。薬のレベルによりけりらしいけど、それらはたちどころに治るらしい。
ポーションは色が薄い順から、初級。中級。上級。特級。神話級とある。
……なんだ神話級って。薬草(ハーブと同じ認識)と魔力を混ぜるだけで、何故身体の欠損まで治るんだよ。
そして魔力。
……この世界の人、物には全て魔素という物が、存在し、それが魔力という形で体内を巡ってるらしい。
とことんファンタジーの世界だ。そして、幸か不幸か私にも魔力は存在することが分かった。……異世界人だからないと思ってた。まぁ、迫害(?)対象にならずに済んで良かったけど。
魔力がない。=魔物。生物扱いはごめんだ。
そしてこの国。シファル領と言うらしいが、齢15の少年、少女は貴族平民関係無く、王立魔法学校の入学が決められてる。
……何故、この話をするのか。それは私の見た目年齢が15歳だと思われたからだ。なんという屈辱。なんという悲劇。私の国では成人でもこの世界では幼いってか?!鬱陶しいわ?!
森で出会い、拾われて家に住まわせて貰ってる今の現状で。甘え続けるのも気が引けた私。
買い物や家事位は手伝おうと色々してた延長線。
ある日、少年と街へ買い物をした帰り道。王国の騎士団に出くわしてしまったのが運の尽き。
……体感としては瞬き1回。その1回の間に、話は進み目まぐるしくあれよ、あれよと流されて。今私は王立魔法学校へと入学してしまっていた。
何故だ!!!!!私が何をしたと言うんだ!!!
そんなこんなで、今に至る。
今は魔法薬学の講義中。
初級ポーションを2人でグループを作り、完成させるという課題の最中だ。
ポーション。なんでも直せる魔法の液体。
作り方は至ってシンプルなのに、魔力を込めただけで、傷から病まで治す魔法の薬。
正直に思う。このポーションは危険だと。
だって、倫理的に可笑しい。だって、種類によりけりだとしても、身体の欠損まで治せるとか、心肺停止して直ぐなら、息を吹き返すとか。
そんなのまるで、………まるで化け物じゃないか。
生命活動をいつまでも続けなければならない。
戦争が起こっても、このポーションがある限り永遠に終わることは無い。
死ぬ事も、楽になることも出来ない。
………そう洗脳されてるみたいだ。
私はこの世界の常識が怖い。
この世界に染っていく……自分が怖い。
私にとって、この世界は正直…ーーーー。
6/2/2023, 12:40:35 PM