ストック1

Open App

私はずっと、平原にポツンと建つこの家で過ごしてきた
いつからなのかはわからない
ただ、気づいた時にはこの家でひとり、暮らしていたのだ
毎日毎日、同じことの繰り返し
自給自足の生活
そのことに不満を持つことはなかった
けど、ある日ふと、疑問が出てくる
この周りの景色は、どこへ繋がっているのだろう?
この景色の先に、世界は広がっているのだろうか?
家にあった古い本の数々
そこに書かれていたようなものが、外にはたくさんあるのか?
そんなことを考えていると、確かめてみたい欲求が高くなっていった
ここより遠く....どこか遠くへ行きたい
私は初めて、この場所から出ることにした
旅の準備はしたけれど、これでいいのかはわからない
それでも、好奇心の赴くまま、旅立ちを迎える
これから先、私に何が待ち受けているのか、何と出会うのか
生まれて初めて、楽しみ、という感情が芽生えていく
いつのことだったか、以前、本を読む中であることに気づくことがあった
私には、感情というものがないようだ
本に出てくる人の心の動きがわからない
行動理由は理解できても、喜び、慈しみ、怒り、悲しみ
そういったものが全く理解できなかったのだ
でも、今は、前に本で読んだものと合致する、楽しみという感情が私の中にあるのがわかる
もしかすると、旅を続けていけば他の感情も生まれていくかもしれない
そのためにも、目的地はないけれど、できるだけ遠くを目指して旅をしよう
どこまで行くのか、どこまで行けるのか、帰るのか、帰らないのか、わからないけれど
こうして、私は世界へ一歩を踏み出した

2/8/2025, 10:45:56 AM