私はずっと、平原にポツンと建つこの家で過ごしてきた
いつからなのかはわからない
ただ、気づいた時にはこの家でひとり、暮らしていたのだ
毎日毎日、同じことの繰り返し
自給自足の生活
そのことに不満を持つことはなかった
けど、ある日ふと、疑問が出てくる
この周りの景色は、どこへ繋がっているのだろう?
この景色の先に、世界は広がっているのだろうか?
家にあった古い本の数々
そこに書かれていたようなものが、外にはたくさんあるのか?
そんなことを考えていると、確かめてみたい欲求が高くなっていった
ここより遠く....どこか遠くへ行きたい
私は初めて、この場所から出ることにした
旅の準備はしたけれど、これでいいのかはわからない
それでも、好奇心の赴くまま、旅立ちを迎える
これから先、私に何が待ち受けているのか、何と出会うのか
生まれて初めて、楽しみ、という感情が芽生えていく
いつのことだったか、以前、本を読む中であることに気づくことがあった
私には、感情というものがないようだ
本に出てくる人の心の動きがわからない
行動理由は理解できても、喜び、慈しみ、怒り、悲しみ
そういったものが全く理解できなかったのだ
でも、今は、前に本で読んだものと合致する、楽しみという感情が私の中にあるのがわかる
もしかすると、旅を続けていけば他の感情も生まれていくかもしれない
そのためにも、目的地はないけれど、できるだけ遠くを目指して旅をしよう
どこまで行くのか、どこまで行けるのか、帰るのか、帰らないのか、わからないけれど
こうして、私は世界へ一歩を踏み出した
2/8/2025, 10:45:56 AM