月見茶

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モンシロチョウ

 加那は幼い頃、蝶が好きだった。特にモンシロチョウが。
 彼女は美しいものを壊すのが好きだった。形をもって美の定義をされていたものたちが崩壊する瞬間に感じる背徳感、それに連なる背中がぞくっと震える高揚感に魅せられた。
 たが、物を壊すことは容易にできない。加那はまだ子どもで、誰かの庇護がなくては生きていけない。頻繁に事を起こせば彼女に疑いの目がかけられる。

 加那にとって蝶は都合がよかった。
 自然のもので、壊しても怪しまれなくて、代わりはいくらでもある美しいもの。
 踏みつける、羽をもぐ、クモの巣につける、ピンで刺す、思いつくことはなんでもした。 
 周りは子ども故の残酷な行為だと思い、気にすることはなかった。



 大人になった加那はダイヤモンドとオニキスが混ざったブローチを見ている。
 まるでモンシロチョウを題材にした蝶だった。
 加那は莞爾の笑みを浮かべながら、ブローチをテーブルへと邪険に置く。
 
 

 そして手に持っていた金槌を、モンシロチョウに叩きつけた。

5/10/2026, 1:55:55 PM