冬至。

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彼の行動が問題視されて彼の粛正が実行された日。
彼は敵対する藩から襲撃を受けたという事になっていた。
その実はひっそり自分らの仲間の手によって粛正されたのだ。
僕はそれを知っていた。
そしてその現場にも居合わせても居た。
そう、居たのだ。
何より彼に最期のとどめを刺したのは自分だった。
悩みに悩んだ。
これは本当に必要な殺生なのか彼はまだうちらの組に必要な人ではないのか。
何よりもこの人は自分らの仲間ではないか!!!
深手を負った彼を前に最後の一振りがどうしても上げられない。
そんな僕に彼は笑いながらこう言った。
「こんなんじゃ生き延びたって恥だ。盛大に真正面から切ってくれ」
もう動けない彼は到底逃げ切れない。
それは誰が見ても分かる状況。
それでも…!!!
割り切れない僕は彼を見つめるばかりで動けない。
「俺をやらないと歴史を作れないんだろう?いい国にするんだろう?泣いてばかりいないで顔を上げるんだ」
ぼやける視界の中であの人は楽しそうに笑っていた。
「早くやれ。そんなに長くは意識が持たない」
「でも…!!!」
「お前の刃で死にたいんだ」
息も切れ切れにそう告げる彼はなおも笑って語りかけてくる。
「いい国にしてくれよぉ」
もうぼやける視界で前も見えないまま刀を精一杯振り下ろした。
刀の先から鈍く何かを切り裂く感触が伝わってきた。
いつまでもその感触は消える事はなかった。


彼が辻斬りにあった事。
それが敵対する藩の仕業である事。
それはその日のうちに仲間に伝わった。
これがきっかけで自分らの組の士気が上がった事。
二つに分断されていた派閥がひとつにまとまった結果となった。
その裏では彼をよく思ってなかった人たちが彼が殺生されてよかった、これでよかったのだと囁いてるのも聞いた。

でもね、彼は誰よりもこの国の事を案じていたよ。
僕はそれを知っているし、そしてそれをずっと忘れない。
彼は素晴らしい武士だったよ。
彼はこの国を笑って暮らせる世にしたかった。
少し強引に押し進めようとしただけで、それだけだったんだ。
正しいとは何なのか。
僕はよく分からなくなった。
自分が信じる正義とは。



           💙⚔️(誰よりも、ずっと)

4/10/2026, 10:19:06 AM