池上さゆり

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 ずっと言えずに胸に仕舞い込んでいた言葉がある。男手一つで私が大人になるまで面倒を見てくれたお父さん。不器用ながらに毎日お弁当を作ってくれた。恥ずかしかっただろうに、生理用品を買ってくれた。学校行事には欠かさず参加してくれた。一人で寂しい思いをしないようにと、憧れていた猫を家族として迎え入れてくれた。大学受験に落ちた時は一緒に泣いてくれた。
 挙げだせば、本当にキリがなかった。それぐらい、これまでの時間に感謝している。

 明日、私は愛する人と結ばれる。

 親への感謝の手紙がまだ書けずに、思い出を一つ一つ振り返っていた。だけど、難しく考える必要なんてなかった。全部、照れくさくて口にしてこなかったものだ。

 お父さんへ。

「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった。その人のことを思い浮かべて、言葉を綴ってみて。

 そうすれば、いいだけのことだったのだ。

5/3/2023, 1:01:04 PM