2023/2/2
「俺は信頼に足る人間ではないんだな」
休憩場所でどんよりと暗い言葉が佐久から出た。
「ア~ カワイソ サクガオチコンダ」
「カワイソ カワイソ」
キャティとベリルがからかい半分で非難してくる。
「ごめんなさい!」
でも、
「本能的な恐怖には勝てなかったの!!」
今日は本番と同じ空中ブランコのセットを使っての初練習だったのだ。最初の開始位置に立った時点であまりの高さに気が遠くなったし、『あ、これ死ぬわ。』とも本気で思った。何とか始めの一歩を踏み出せたのだが佐久の手に飛び移るのに失敗した。『何が何でも手を掴んでやる』その真剣な目に応えることが私には出来なかった。落ちるのが怖くて自分が掴んでいるブランコのバーを放すことが出来なかったのだ。
「ユリノ イクジナシ」
「ユリノ コンジョウナシ」
「その通り過ぎてぐうの音も出ない!!」
大きく揺れていたブランコはどんどん勢いを無くしていきついには止まった。私がぶら下がったままの状態で。最終的に腕が限界を迎え落ちた。
「ミゴトナ キョムダッタヨ」
「ミゴトナ サトリダッタヨ」
「せめて受け身を取る位はしろよ」
始終笑っていたキャティとベリル、深い溜め息の佐久で初空中ブランコの反省会は幕を閉じた。
2/2/2023, 9:54:49 AM