『Love you』
出逢いはとにかく最悪だった。
新しい職場では、土曜日の業務終了後、全スタッフ合同で、技術力向上のための勉強会が行われていた。
その勉強会の前に全員注文している仕出し弁当があったのだが、それを注文するとかしないとかの件で少々もめた。
その担当者が、彼だった。
外食も出来合いの弁当も、肉料理が多い。
小学2年生で肉を食べらなくなった私は、相手の気分を害さないように丁寧にお断りをした。
つもりだった。
しかし先輩は「私以外全員頼んでいるから、私にも頼んで欲しい」と言ってくる。
一人だけ違う人がいると面倒だというのだ。
驚いた。
一手間取らせるのは間違いないが、そこまで大きな手間か?
これって「自分の仕事を増やすな」という意味も含むよね。
バカ正直か。
本心で話す人なのは分かったけど、
言葉の選び方、悪くね?
軽い口論の末、
申し訳ないが、我を通させてもらった。
その頃貧乏学生で、食費月5千円で生活していた私にとって、1個5百円の弁当代は高かった。しかも半分くらいは食べられないのが分かっているので、ここはどうしても譲れなかった。
学生アルバイトのくせに、生粋だと思っただろう。
しかし、後になって聞いてみると、この時、面白いやつだと思ったらしい。
口論の元となった「肉を食べない」も、私に興味を持った理由の一つだというのだ。
それを聞いて、本当にバカらしくなった。
あの口論は何だったの?
何がどう縁に繋がったのだか。
あれから、ずいぶん長い付き合いになった。
私から「好きです」と言ってないし、
彼から「付き合ってください」とも言われていない。
一緒にいる時間が長くなり、いつの間にか隣にいた。
完全に伝えるタイミングを失ってしまった言葉。
今頃言い出したら、ぶん殴る。
2/23/2024, 6:14:34 PM