シオン

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(現パロ)
 『権力者タワーの周辺は漆黒に包まれていて、簡単に言えば光なんか一ミリもさしてなかった』なんてことを急に思い出した。理由は明確で星がまたたく空を見ているから。
 『友達』に誘われてキャンプに遊びに来たのだ。
 山の中だから、普通よりも沢山の星が見える。
 そういえばユートピアで演奏者くんに星を見せて欲しいなんて約束したな、なんてことを思い出した。
 結果的にボクが先にあの世界を去ることになって、ついでに演奏者くんは天使様だったから死ねなくて。そんな訳でボクらの約束は果たされぬものになってしまったのだ。
「…………一緒に見たかったな」
 その声は闇夜の虚空に消えるはずだったのに。
「見てるよ、一緒に」
 そんな言葉が返ってきてしまった。
 あわてて隣を見れば、演奏者くんがあの時と変わらぬ笑顔で笑っていた。
「………………演奏者くん」
「フォルテだよ」
「なんでここに」
「僕は天使様だからね」
 演奏者くんはニコニコしながらボクを見つめた。
「会えると思ってなかった……」
「ふふふ、僕は天使様だからどんなことでもできるよ」
 言ってることは何となく恐ろしさがあるのに、顔は嬉しそうで、まるで愛おしいものを見つめるような眼差しで。だからだんだんなんだか分からなくなっていく。
「じゃあ、行こうか」
「…………どこに?」
「僕らが一緒にいられる場所」
「………………行きたい」
「うん、行こう」
 彼が差し出した手を握ると、なんだか暖かい感じがして、ギュッと彼のことを抱きしめた。
「かわいい」
 演奏者くんがそう言った。

7/5/2024, 2:18:45 PM