彼女と出会ったのは、中学一年の春だった。
入学式を終えて帰ろうと廊下に出た俺の視界に、同じように友達と帰ろうとしていた彼女の柔らかな微笑みが映って……一目惚れだった。
しかし、それからしばらく経って、中学三年の秋。
新学期を終えてすぐ、彼女は入院した。
別のクラスだったから、なぜ突然入院してしまったのか詳しく知らなかった。
当時、周りから『病気らしい』と噂されていたこともあり、あまり気にしないことにした。
それからまた時間が経ち、二十歳。
成人式で浮かれていた俺は車に轢かれた。
俺は馬鹿だ、あんなに周りから「気をつけろ」と言われていたのに。
……幸い命に別状はなかったけれど。
鏡を見ると、顔と腹に一生消えない傷跡が残っていた。
「こんなことなら、告っとけばよかった」
病院のリハビリ室を出て、すぐのところにある鏡を見ながら俺はぼやいた。
こんな顔じゃあまた好きな人ができたとしても、告白をためらってしまう。
自分で見ても、少しゾッとしてしまうくらい、奇怪な傷跡。
「好きな人でもいるんですか?」
女性に声をかけられた。
同じ入院患者だろう、俺の顔を見ても平然とした顔で立っている。
「ああいや……この顔じゃ、好きな人ができてもなーって」
俺は苦笑で返してから、彼女の目を見て異変に気付いた。
「んー、私にはお顔が見えないのでわかりかねますが……ほんとにそうなんです?」
「……見えないんですか?」
「はい、両目ともありません」
彼女はそう言って、両目を覆う布を指さし笑った。
柔らかで、明るい声音で。
けれど喋り方が特徴的な……初恋の人と、彼女はよく似ていた。
「最近来られた方ですよね?」
「ええ……なんでわかるんですか」
「新しく来た人は、結構すぐわかりますよー」
不思議な空気感の人だ。
彼女が笑顔で話すと、自然と肩の力が抜けてくる。
けれど、そんな穏やかな気持ちは次の一言で瞬時に吹き飛んだ。
「私、サクラバ アカリ。あなたは?」
中学時代に突然いなくなった、初恋相手と、同じ名前。
ああやっぱり、でもそんなことが、彼女に一体なにが、俺のこと覚えてるかな。
今も昔も変わらないんだな、俺のほうはこんなにも変わってしまったのに。
あの頃好きだった曲はもう聴いてない、好きな食べ物も変わった。
背が伸びて贅肉が増えて。
なにより、顔が……。
いろんな気持ちが混ぜ込まれてしまい、言葉に詰まった。
それでも言葉を返したくて。
震えていることを悟られないように、体を強張らせて言った。
「俺はユウト、はじめまして」
【 はじめまして 】
4/1/2025, 11:38:06 AM