「海に行かない?」
昼休み。
一つの机を二人で挟んで、弁当を食べていると
君は突然そう言った。
「私は良いけど、いいの?サボったことないじゃん」
彼女は私とは違ってとても優れた人だった。
男女問わず楽しそうに話すし、成績も良い。
規則もよく守り、所謂優等生というに相応しい人だった。
「いいって言ったね。じゃあ行こ。今から」
君が急かすようにそう言うものだから
私たちはそそくさと荷物を片付け
先生の目を縫いながら、昼の校舎を抜け出した。
「寒いね」
暖かくなったとはいえ、まだ春と言うには早かった。
黒ずんでいるような、白くくすんでいるよな海は
周囲の音をかき消し、その広大な存在感を示した。
彼女は何も発しなかった。
「……曇ってると、空と海の境目って曖昧になるよね」
だからなんだ、と言われれば返す言葉がないが
とりあえず話してみた。
だってちょっと不気味になる程、君は何も喋らない。
「……疲れた?」
「……うん」
口角だけ上がった顔を崩さないまま
君は少し頷いた。
太陽が見える訳でも、雨が降るわけでもない空は
静かに波の音を聞いていた。
2/25/2026, 3:28:02 PM