たやは

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どこまでも

車を停め石段を登始める。
よし!頑張るぞ。

はあ。はぁ
1159段、20分て登れるとか書いてあったけど、まだまだ先が見えない。
見上げれは、どこまでも続く石段。

「あんた。下ばっかり向いてないで振り返って景色見なさいよ~。綺麗よ〜」

前を歩く母の声に促され後ろを振り返ると、今まで登ってきた階段、そして、もう少し目線を上げれば町並みとキラキラ輝く海。

「お〜。海だ〜。確かに綺麗だね」

今日は風もなく、波は穏やかで太陽の光が反射して眩しくらいだ。
どこまでも続く海と空の青が交わり、水平線の境い目がぼやけている。

いい日だなぁ。

「さあ。休憩は終りよ。登りましよう」

母の掛け声でまた登り始める。

登っても、登っても階段。
はあ。はあ。
静かだ。自分の足音と息づかいしか聞こえない。

昨日は、会社でイヤなことがあった。いわゆる、クレームだ。
最初に対応したのは私ではないけど、結局は私にクレーム対応が回ってくる。
いくら謝罪しても「納得できない」を繰り返すお客様。
どうすればいいのか尋ねても「お前が考えろ」と怒鳴る。

これ、カスハラだろなぁ。
でも、横にいる上司もペコペコと謝り続づけている。

あーあ。
イヤなのと思い出した。
忘れよう。せっかくの休日。

また、石段を登り始める。
「良くないことがあるなら、お祓いがてら神社行こう」と母に誘われ石段を登り始めて30分。やっと終着点が見えてきた。

石段を登りきると少し開けた参道に出る

「まだ登るの…」
思わず肩を落とす。

「もう少しよ。頑張って」
母は元気だ。

ふと、参道から右に顔を向けると大きな看板が目に入る。

「ロープウェイ乗り場…。ちょっと、お母さん!ロープウェイがあるよ」

「ロープウェイ?あー。あんた、知らなかった」

「お母さんは知ってたの?言ってよ〜。ロープウェイが良かったよ。なんで石段登ったのよ。もう、疲れたよ」

「あんた。神様にお願いに来たのに楽することばっかりね。しつかり歩きなさい」

確かに母の言う事に一理はあるかもしれないが、ロープウェイ…。ロープウェイが良かたなぁ。

でも、参道に入ってから空気が変わった気がする。
しつかりお祓いして明日から頑張ろう。

10/12/2025, 8:02:20 PM