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 目を極力合わせず話をして、行動する時は一定の距離を保つ。
 分厚過ぎる壁を除けようとどれ程の労力を費やしたことか。時間があれば食事に誘い、箸の進み具合で味の好みを探る。ある時は共通の友人を交えて危害は無いよと振る舞った。君が困る事があれば誰よりも早く手助けできるよう目を光らせていたし、その事は部下や友人に知らせて協力してもらったりと必死だったわけだ。何せ出会い方が悪かったのだから。

 君の警戒心がするすると解けたのは家族と故郷の思い出話を披露したある夜のこと。「素敵だね」と初めて目を合わせ、話を、家族を褒めてくれたことは忘れもしない。内から広がる嬉しさで俺の手は震えていた。

 常に分厚い壁を作っていた君との『絆』をやっと、手に入れた瞬間だった。

 時間を経て、君との仲はだいぶ深いものにできた。簡単に切り離せはしない。ただ、君の友人の中には、俺を良く思わない人間も僅かながらに残っている。
 君を絆して隠した後、自分こそ正しいと信じて疑わない彼らとの『絆』を、俺が絶ってあげる。

 せっかく傾いた天秤を戻させるような行いを俺が黙って見逃すわけがないじゃないか…!

3/6/2023, 5:08:06 PM