一夜の夢

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「また君と年を明かせるとは思っていなかったよ」

マフラーに埋もれた口元で、彼はもごもごと呟く。
自信の無い瞳は元日でも健在だ。

「来年もその次も、ずっと一緒に新年を過ごせるさ」

僕もなんだか照れ臭くなり、明後日の方角を見つめながら彼を安心させてやろうとした。
まったく、世話が焼ける友人を持ったものだ。
彼のネガティブさはいつも少しズレていて、それがなんだかおもしろい。
僕はしばらく彼の返事を待った。

「…うん」

ようやく小さな肯定が聞こえた。
そっと彼に目をやれば、耳まで真っ赤にしている。
これは友人としてはからかわなければ。

「寒いのか?」
「ほっとけ」

やっと君と目が合った。
わかりにくい笑顔が目元に浮かんでいる。
今年も良い年になりそうだ。

1/1/2024, 1:46:05 PM