「やあ君、いいところに! ちょっとこれを見てくれ」
昨日と一昨日と学校を休んでいた先輩が、何事も無かったかのように私を手招きしてきた。
私は呆れたやら心配して損したやら安堵したやら、いろんな思いが胸を駆け巡り、なんかどっと疲れた気分になった。
「……何してたんですか」
ただそれだけを言うと、先輩は首を傾げてさも当たり前のように答えた。
「学校をサボっていたぞ? 考えたいことや調べたいことがあったからな」
「よく親が許しましたね……」
「体調悪いと言ったからな。自分で言うのもなんだが私は風邪を引いたことがほぼなくてな、親が一も二もなく休ませてくれたぞ。
実際頭が痛かったから体調悪いのは嘘ではなかったし、まあ大目に見てくれ!」
「別に怒ってませんよ……
で、何ですか?」
机の上に広げられていたそれは綴じられた原稿用紙の束だった。別段変わったところは無さそうに見えるけど、先輩が手招きするくらいだから何かあるのだろう。
「見たまえ」
先輩が一番最後のページを開く。そこにはリンドウの押し花と誰かのKissマークがあった。
押し花はともかく、Kissマークが異質すぎて思わず小さな悲鳴をあげてしまった。
「な、なんですか、これ……」
「わからない。私にはこれを作った記憶も、誰かから貰った記憶もない。
まるっきり謎の存在なんだ」
「え……まさか、呪いのアイテムとか……?」
「いや、そういう気配は一切ない。
むしろ……違和感を抱くことに特化した物のような……?」
先輩はアゴに手を当て、むむむと考え込む。
でもすぐにバッと顔を上げて「わからん!」と叫んだ。
「仕方がないから運動だ! ラジオ体操第一をするぞ!」
そう言ってすぐにラジオ体操の曲を口ずさみながら背伸びの運動を始める先輩。
……なんというか、これぞ先輩だなあ……
そんなことを思いながら私は図書室で借りた本を読み始めるのだった。
2/4/2026, 1:48:02 PM