未知亜

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ㅤ思い出しては何度も考えた。なんであんな言い方をしてしまったのか。ほかに言いようがあったはずなのに。
ㅤ君と離れたあの時以来、逃げるように仕事に打ち込んで過ごした。寂しい気持ちに必死で背を向けていた。

ㅤなのに、信号待ちで立ち止まった時、月の光が街路樹の雨粒をキラキラと輝かせるのが見えたんだ。普段は気づきもしない光景。遠い夕闇に、星がひとつ。
ㅤああ、そうか。人はそんなに変われない。そんな言葉が泡のように立ちのぼる。

ㅤ想像のなかで何度も謝った。弁解して言い訳して、離れていくこころをつなぎ止めようとしたあの日。
ㅤたとえ上手くやり過ごせたとしても、根本的な解決にはならなかったのだ。
ㅤ本質はそんなところにはなかったんだな。

ㅤ青に変わった信号を、急に新しくなったようや世界を見晴るかす。
ㅤ初めて素直に思えた。
ㅤ何はともあれ、巡り逢えてほんとうによかったと。

『巡り逢い』

4/25/2025, 9:59:10 AM