NoName

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「今日で卒業? 生きたねえ」
浸りに来たのは、感傷か懐古か。それすら分からないのに、それより分からないモノがいる。
それは、2年前に身を投げた私の親友だった。

「感想は?」
「……死ぬほど驚いてる」
「死んだやつ前に言う? 趣味悪いねえ」
何が気に食わなかったのか分からない。コイツをいじめていた奴らも、コイツも。
しかし、非の打ち所のない彼女を、取るに足らない子供じみた悪戯の鋭利さを、疎ましく思っていたのは両者ともだ。
「……お前が死んでから大変だったよ」
お前しか友達いなかったから、2年からお前への依存で成り立ってたものの代役を探さないといけなかった。春休みは地獄だったけど2年で全部報われた。
一軍に引きずられて韓国に推し作って、いつの間にかマジになってた。あと彼氏できた。春からは女子大行く。最高に人生楽しくて、高校生活やったったって感じ。

……でもさ
「やっぱ楽しくないわ!」
柵の向こうに居る親友に抱きついた。触れた気がして、涙が出た。下からの風圧で死ぬ気で固めた前髪が垂直に持ち上がる。
リソンジュンはかっこいいし、スタバの新作飲みたいし、春ドラマも見たいけど
お前とジャンプの読み切りとか、今季のアニメとかで騒いでた時期が一番輝いてたみたいな気がして!
思い出補正でもなんでもいい!
私は今、すべてを投げ売ってでも手に入れたい幸せを見つけたんだから。

そう、ハッピーエンドはこの腕のなかに――!
【ハッピーエンド】2024/03/30
幸せの終わり
この子は運良く死にそこねます。よかったね、ね。……え?

3/29/2024, 4:11:36 PM