題名『罪悪感』
(裏テーマ・逃れられない)
誰にも鍵の掛かった引き出しがある。
誰にも見られたくない過去がある。
逃れられない罪もある。
そして、その大事な鍵も失くしてしまってる事がある。
テレビのニュースで知った。
あいつが白昼に街で何人も人を刺して殺したらしい。
小学生だったあいつが、ボサボサ頭で髭まではやした汚らしいオジさんになっていた。
20年も過ぎていた。
ずっと引きこもっていたらしい。
「死にたくて、死刑になりたくて、それに、人生の最後は、凄いこともしてみたくて、やりました。」
そんな供述をしているとネットでは書かれていた。
「ヒーローになりたい。カズやイチローになりたい。有名人になりたい。そしてボランティアもしたい。僕んちみたいな貧しい家でも成功できるって子供が夢見れる存在になりたい。」
一緒に毎日遊んでいたあの頃、そんなことを言ってたね。
俺は金が欲しいから、悪徳弁護士か悪徳医者か悪徳政治家になりたいって言ったら、ぜんぶ悪徳なんだって笑っていたね。でも、
「まじめに生きないとダメだよ」って説教されたっけ。
小学六年の時にイジメが流行った。
そう流行みたいなものだった。
一人一人、順番のように。
俺もやられた。
でも、おまえだけは守ってくれた。
そして、おまえの順番になった。
正義感の強いおまえはことごとく逆らった。
それがクラスメートの反感を買い、不良グループを本気にさせていった。その中にタチの悪いお兄さんがいる男の子がいて、その子を中心にしてイジメがエスカレートしていった。
そしてターゲットは俺にも牙を剥く。
俺におまえをイジメさせたり、殴らせたり、親友の俺を使うことでおまえの心を折ろうとした。
俺が限界に思った頃から、おまえは学校に来なくなった。
心が折れたのか、もしかして俺を守ったのか。
中学生になってからもおまえは学校に来なかった。
1回だけ家に行ったが会いたくないと言われた。
そして、俺は自分の毎日で精一杯になっていった。
人の人生なんて、わからない。
俺は今、ファミリーレストランの店長をしている。
悪徳なんとか?にはなれなくて、貧乏暇無しだ。
鍵の掛かった引き出しは、もう開けれない。
取り返しのつかない過去だから。
恨んでいるんだろうな。
本音は、会うのは怖いし薄気味悪い。
でも、裁判は行きたい。
そこに失くした心の鍵がある気がするから。
そして、引き出しに、忘れてる大事な物が入っていた気がするからだ。
5/23/2024, 12:18:14 PM