年が明けた。
いつもなら正月は酒を飲んでゆるりと過ごしているが、日課のランニングは続けたいと早起きをする。
ランニングウェアに着替えていつも通りのコースを走った。汗をかいたのでシャワーを浴び、今度は初詣に行く支度。走っている途中、早朝だがちらほらと初詣帰りらしき人を見た。たまには行ってもいいのかもしれない。何と言ってもしつこいストーカーに付きまとわれているのだ、ついでに厄払いをしてもらおう。
神社へ到着して、賽銭を入れ、無事に過ごせるよう祈る。無宗教だが神にすがりたくなる気持ちだった。俺の平穏な日々、戻ってきてほしい。
祈り終わると、後ろからグイッとコートを掴まれた。
「やっぱり!見間違いじゃなかった!」
女子高生ストーカーに遭ってしまった。振り返るんじゃなかったと後悔した。
「すごい偶然!初詣?私もさっき来たところで……」
何か嬉しそうに話しまくっているが、半分以上聞いていない。最初からつけてきたのではないか?住所が知られている?等、様々な憶測が頭の中を駆け巡る。
「お守りとか買うんですかー?」
「厄払いに来ただけだ」
それだけ言うと足早に去る。関わらない、やはりこれが最適解だ。
「待って待って!手ぶくろ返したいし!」
年末にやむなく貸した手ぶくろを何故今日持っているのか不明だ。やはりストーカー、侮りがたし。
「返さなくていいの?」
「構わない」
「この前は返せって言ってたのに?」
「だから、君が」
「私が?」
君が喜ぶから駄目だと言ったら流石に傷つけてしまうだろうか。そんなことを思ってしまった。
「──君が身につけた物は危ない」
「ええっ?!」
何を口走っているのかわからないが、これでいい。頭のおかしい奴だと思って離れてくれれば。
新年早々、厄が降りかかる……はたして、穏やかな日々を取り戻すことはできるのだろうか?
【新年】
1/2/2024, 8:13:05 AM