浮遊感と背中への衝撃。
背の高い本棚の、一番上の段の本が取りたかった。
台に立って、背伸びをしてぎゅうぎゅう詰めになっている本を思い切り引っ張ったら、後ろに倒れてしまったのだ。
でも背中は思ったより痛くない。
顔を上げると今日の担当執事のあごがあった。
主様、大丈夫ですか?と声をかけられて、彼との近さを実感した。
大丈夫だと言って離れる。すると、彼はこのようなことは執事である私を使ってくださいね。と言いながら、いまだに頭上に収納されたままの本を取ってくれた。
ありがとうと受け取ろうとすると手を取られ、主様が傷つくところは見たくありません。と言われた。
そう言われても、自分でできることは自分でやりたい。抗議の意思を持って彼の目を見つめると、目を細めて笑われた。
主様のペースで大丈夫ですよ。少しずつ、この生活に慣れていきましょう。
本のお供に紅茶はいかがですか?と言われてお願いした。彼の淹れてくれる紅茶は美味しい。紅茶が入るまで、夕陽の見えるあの暖かいソファーで待っていよう。
落下について
6/19/2023, 8:55:55 AM