『見つめられると』 120
 君が僕を見つめてる
 僕も君を見つめてる
 歩いて十歩の距離を離して
 君と僕とで見つめ合う
 被写界深度が浅くなる
 周りが見えなくなってきて
 君しか見えなくなってきて
 それでいいと思ってた
 君だけ見えたら満足だった
 光を背中に纏った君は
 神々しくて美しかった
 ……触れてみたくなったんだ
 ほんの少しの欲が出たんだ
 君に近付こうとしたその瞬間
 君の姿が掻き消えた
 …………あぁ、そうか
 ストロボが壊れたのだ
 ……ただそれだけだ
 ストロボが壊れたのだ
 ……そうそれだけだ
 君は変わらずそこにいる
 君は変わらず美しい
 君の姿は見えないけれど
 君がいるだけで満足だ
 ……しかしながら如何してか?
 君に近付こうとすると
 脚が震えて動けないんだ
 君はそこにいる筈なのに
 僕を見つめてる筈なのに
 何を恐れているんだろう??
3/28/2023, 1:42:42 PM