#きらめく街並み
#141
もう一度会えるならば
もう一度だけ会えるのならば、喋りたいことが山ほどある
去年のクリスマス、君は息を引き取った
きらめく町並み、大通りの真ん中で君は息を引き取った
なんで守れなかったかな。なんで見てられなかったかな。最期ぐらい一緒にいたかったな
僕が自販機に飲み物を買いに行ってる時に君はトラックに轢かれたんだ
トラックの運転手は脳震盪を起こしたらしい
自分は意識がない人に喋りかけるのは馬鹿らしいと思っていた
だけど、だけど、君がいなくなる事に身体全体が否定していたんだ
体全体が呻いていた。恐れていた。この世で一番恐ろしいことをこの目で見てしまったんだ
トラックのナンバープレート辺りが血の海になっていた
しばらくして警察が来た。救急車も来た
だけど分かっていた。何も知らない僕さえも直感していたんだ
君がもう戻らないことを。体が否定しても、どんなに呻いても、起こったことは変わらない
君ならこういうときなんていうんだろう。わからないや
あの日から時間が進みもうすぐで一年が経とうとしていた
去年の雪が降っていてキラキラと輝く街並みの中の血の海がいつでも蘇ってくる
もう君は戻らなくても僕の心のなかで生きている
人は死んだときが終わりじゃない。人は人に忘れられたとき初めて終わる
誰も知らない、誰も覚えていない。君をそんな状態にさせたくない
ちょっとでも楽になってほしい。そんな願いとともにクリスマスが来る
血のクリスマス、雪が降るとき、毎度毎度君を思い出す
今度のクリスマス、僕が君の元へ行くからね
きらめく街並みに包まれながら
12/5/2025, 10:33:57 AM