小学6年生の頃図工の授業で、授業が始まる前の5分間クロッキーをやらされた。
先生は講師で多分、絵の先生だったと思う。毎回クラスの中の誰かがモデルになって、ポーズを取らされる。
わたしが覚えているのは、ちりとりと箒を持って、掃除をしている最中のポーズだった。どこからどう見てもいいので、みんな自由に描く場所を決める。わたしだけが動いちゃダメ。教卓に乗ってゴミを集めるポーズを取ると、一人の男の子が下から覗き込むような場所を選んだ。
絶対変な顔になっている…そう思った。鼻の穴を見られないように顎を引くと、不自然だと先生に言われた…
あの時の5分間は辛かった。でも、その男の子は見事、わたしの顔のどあっぷを描きあげた。
箒を握る手を描いた子も居た。上靴から足を描いた子も。先生はそれぞれのパーツを黒板に貼りだして、「どれも君だよ」と、言った。
そのセリフは、いつもモデルになった子に言うんだけど、他の子が言われているのを聞くのと、自分が言われたのを聴くのとでは、全然違って聴こえた。
今思うと、みんなが描いた絵をもらえたらよかったのにな。
中学生になった頃、『卵を持った自分の手を描く』という課題があって、それから自分の手を描く事に興味を持った。自分の手を絵にすると、全然違う人の手みたいで、いつも下手くそに思える。
今でも好きだなクロッキー。
そればかりで、色が塗れないけど。
4/12/2025, 11:17:56 AM