ちょっと遅めの、冬支度をすることにした。
寒くなってきたのは分かってた。
特に忙しかったわけじゃない。
でも…ほら、物の整理って面倒でしょう?だから、ぎりぎりまで夏服に羽織ものでしのいでた。
でも、ある休みの日。
目が覚めて、体を起こしたら、くしゃみがひとつ口から飛び出して。
そうしたら、なんとなく、今日、冬支度をしないと、ってやる気が出た。
早速部屋の隅に置いてる収納ボックスを引っ張り出して、中身を全部取り出し、半分ほど洗濯機に突っ込む。
洗濯機のゴウンゴウンという音が聞こえ始めたのを確認して、夏服のエリアに取り掛かる。
私のマイルール。
服をしまう時に、来年着るものと処分するものを決める。
着るものは収納ボックスへ。着ないものはリサイクルショップかごみ袋へ。
確か去年の夏は結構リサイクルショップへ持っていった。だから、今年の夏はいつもより多く夏服を購入した。そんなことを思い出しながら、テキパキと夏服を収納ボックスにしまっていく。
それでも、着ないものは出てくるもので。
今年は2着だけ、収納ボックスに入らなかった。
ひとつは、もう5年以上は履いてたジーンズ。全国的に有名なお店で購入して、毎年よくはいてたんだけど、ある日。
しゃがみこんだ拍子に、ビリッと、音がした。
慌てて確認すると、左膝のあたりがぱっくり裂けていた。ショックだったし、ひとつのオシャレだと思ってはこうとしたんだけど、見るたびに悲しい気持ちになって、結局はくのを避けるようになっていった。
「今まで、ありがとうね。」
そう呟いて、ごみ袋に入れる。なんとなく、売る気にはなれなかったから。
もうひとつは、今年に道端で立ち寄ったお店でオススメされて買った、花柄のワンピース。試着したときはワクワクしたし、家の鏡で見たときも悪くないと思ったんだけど、外に出ると違和感があった。
夏の暑い日差しの中で服を見ると、何だか自分が色褪せた気がした。決して、そんなことはないはずなのに。
この夏、何度も着たけど、違和感が拭えることはなかった。だから、迷ったけど、リサイクルショップに持っていくことにした。
きっと、この服を明るく着こなせる人が持っていたほうが、私も幸せになれると思ったから。
「……よし。」
誰にとも無くうなずき、収納ボックスの蓋を閉じる。
それと同時に、洗濯機の終了音が鳴る。
私は感傷と高揚を胸に立ち上がる。
さて、この冬は、どんな服に出会えるかな。
11/6/2025, 3:29:18 PM