りんごまだんご

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 青く、果てしない海の中。そこで僕は世界一きれいな貴方と出会った。
透き通った青い尾ひれ、光を反射したきらきらの白い鱗、きれいに整ったギザギザの歯。一目見ただけだど、凄くきれいだと思って、気づけば群から離れて話しかけていた。
「あ、あの‥…!」
「!‥…?」
貴方はいきなり声をかけた僕に驚いていたが、
僕を見て捕食者じゃない事に気づいたら聞く姿勢を取ってくれた。
「いきなりすみません、あの、凄くきれいだなって思って‥…!良ければ、名前を教えてくれませんか‥…?」
うまく喋れなくて、はずかしさで頭のなかで思考がぐるぐるした。そんな僕を見て貴方は天使のように微笑んだ。
「んははっ、ありがとね~坊や。特別に教えてあげる、あたしの名前はね」

 
✅   🐟️   🐚    🐚    🦈




 貴方の名前を知れる前に、サメが襲ってきて僕は群の大人に手を引かれていった。群の大人越しに貴方が逃げるのが見えて凄く安心した。だけど、その日から僕の群はサメが現れたその場所に寄り付かなくなってしまった。貴方の名前も知らず、貴方が居た場所にも行けず。この広い海で貴方とまた巡り会うことはほぼ不可能だと察して泣いた。今では海で生きていく上で他の魚との別れをいちいち惜しんではいられないと分かる。だけど、あんなにも綺麗な貴方を忘れられるわけもなく、僕は未だに密かに貴方に会えるのを期待している。

10/3/2024, 11:49:45 AM