不整脈

Open App

砂の音を知ってる?
それは風が吹いたあとに残る
誰にも聞こえない、乾いたささやき

歩きすぎた足が重くなって
影を失った背中がかすれていく
あぁ、また
私じゃなくなっていく

まっすぐに立てる日ばかりじゃない
起きる理由が見つからない朝もある
それでも
なぜか喉が渇いたまま
歩くことだけはやめられなくて

見えたの
揺れてたの
目の端に、一滴のやさしさが

誰かの声だったかもしれない
忘れていた歌の一節かもしれない
それとも
ただ、あなたの笑顔だったのかも

オアシスは、
決して水じゃなかった
それは、
私が“わたしに還れる”という確信

ここまで来てよかった
なんて言葉を誰にも言わないけれど
私の中に、やっと根が張った
名もなき優しさが、今も波紋を広げてる

だから今日も、砂の上を歩いていく
目を細めながら
もういちど、その影を探して

7/27/2025, 3:39:53 PM