やなまか

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大学の校内の廊下。
彼から随分と熱っぽい目線で見られているなと気付いた。前はずっと喋っている仲だったのに。最近、顔が合わせづらい。

私は急に照れくさくなって急ぎ足になっていた。
だけど、彼とは足の長さが違う。
わざとらしくないようにちょっと息を荒くしながら逃げたけど、彼にはすぐに追いつかれてしまった。
「なぁ。最近オレのこと避けてないか」
低い声が私を縛る。そのまま壁に追い詰められてしまった。
「避けて、ません…」
そう言うだけで精一杯。
「なんか悪い事したなら教えてくれ。顔も合わせたくないぐらい嫌ならもう…」
「嫌なんかじゃありません! だ、大事な友達です!」
その時の彼の顔をなんと表現しよう。
背が高くて頼りがいがあって。明るくて皆を引っ張る、いつでも眩しいぐらいかっこいい人が…おもちゃを奪われた子供のような傷ついた顔をしたのだ。

「そうかい。友達か。特別に思ってたのはオレだけか…」
「えっ…」
傷ついた子供の顔が急に色気を増してきて困ってしまった。
どういうこと。特別って部分で、胸が潰れるぐらい切なくなった。
「私だって、特別…です」
もう感情が溢れてどうすることもできない。顔が見れないよ。心臓の音がうるさい。



10/25/2023, 10:47:40 AM