高嶋のぎ

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貧乏神(書く練習SS)


 男は、ふと自分の枕元に影が立っていることに気がついた。
 壁まで伸びた影は不気味に黒く、長く、そして長い鎌を持っているように見えた。

「もし、貴方様は死神でいらっしゃいますか?」

 幻覚かもしれないと、思っても男は尋ねずにいられなかった。

『そうとも。お前の魂を連れていく』

 短く死神は答えた。

「ああ!本当にいらっしゃるんだ、死神様…」

 弱々しいながらも喜色の声をあげるので、死神は男を不思議に思った。

『お前はワシが怖くないのか。普通は怯えたり落胆したりすれど、歓迎されたのは初めてだ』
「これには、わけがあるのです……」

大きく息を吸った男は自身の生い立ちを語った。
両親、友達、周囲とも恵まれなく、金も実力も運さえも見放され、挙句が死にいたる病である。
聞くも涙、語るも涙の見事な不幸人生であった。

「……なので、これでようやく死んで自分は楽になれると。貴方様がおいでなすって喜んだわけです」
『いや、なに。事情がわかって納得したわい』

ふむふむと死神が頷いた。

『そしたら、あんたは神になる才覚があるのう」
「…神?、え⁉︎僕がですか!」

男の瞳にわずかな光が芽生える。
死神は指を差して告げた。

『いや、取り憑いてたそこで見てるあんた』

4/9/2026, 1:54:07 PM