竹崎セン

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「好きだ。」
心の中だけに留めていたつもりの言葉が溢れてしまったことに気がついたときには全てが遅かった。
きゅっと閉まる喉。ぶわっと湧き上がる汗が粟立つ背中を伝う。
「いや、ちがっ.....!」
弁明しようも出てしまったものはもうどうしようもない。頭も舌もうまく回らない。呆けていた顔も次第に意味を理解したらしく、瞬く間に紺碧の瞳が見開かれた。
「そうじゃない、そうじゃないんだ......!」
聞いてくれ......!
声に出すたびに不利な状況へ追い込まるというのに、そうせずにはいられなかった。
「……ぃ」
ぼそり、呟かれた声。
その冷たい響きに部屋中の時が止まったように感じた。
「汚い…」
今度ははっきりと放たれた言葉。
ああ、終わってしまった。
そう実感すると共に射抜かれたような痛みが胸に走る。
それなのに、拒絶された以上の爽快感があるのも事実だった。
「すまない」
それでも好きなんだ。そう懺悔すれば、悲しげな瞳とぶつかる。
「なんで謝るんだよ」
さっきの言葉を吐いたとは思えないくらいまるで振られたのはそっちみたいな涙声。見れば海のような瞳からポロポロと雫が溢れている。
「だって、汚いんだろ?」
そう言いながら目と鼻を拭ってやると、しゃくりあげながら首を横に振る。
じゃあ一体なんなんだ。
いろんな感情を押しのけて困惑していると、涙ながらにやつは口を開いた。

「アンタはそんなにも綺麗なのに…オレは、…..」

いつも調子に乗ったようなことばかり言うくせにどうしてこういう時に限ってこいつはこんなにもいじらしくなるのだろう。

思わず抱き寄せたあの日の温もりを自分は一生忘れることはないだろう。


お題【あの日の温もり】

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もしかしたら続きか、前日談つくるかも。


3/1/2025, 9:27:12 AM