「君のこと、忘れないから」
そう言い残して勿忘草を一輪渡して去って行った彼氏。
次の日には、連絡が取れなくなっていた。
それまでケンカ一つしないで仲良く話していたのに。
私はショックすぎて、怒りと、悲しみと絶望と苦しい気持ちに苛まれていた。
あれから三ヶ月。
全然心の痛みは和らがない。
あれから、もらった花の花言葉を調べてみた。
私を忘れないで、と真実の愛、という複数の意味があるらしい。
忘れないで、なら、別れても忘れないでね、という意味かなと思うし、真実の愛、なら待っていてという意味ともワンチャン捉えられる。
でも、連絡つかない時点で、もう終わりなんだろうな、と、私は諦めのため息をついた。
ピンポーン、ピンポーン
その時、チャイムが、けたたましく連打された。
私が玄関に行くと、当の元彼?がそこに立っていた。
「ごめん!まさか届かないなんて・・・僕のこと忘れてない?他に彼氏とかできてないよね?!」
彼氏は、私が扉を開いた瞬間に私を抱きしめてそう言う。
「は・・・?生憎あなたに振られたショックで彼氏なんて作れる状況じゃなかったわよ」
「違うよ、僕は振ってなんてない!」
彼氏の声が大きくなり、マンションに響きそうだ。私は彼氏に玄関に入るように言う。
「ごめん、興奮して・・・。急に会社から海外へ短期出張が入って・・・。君と離れたくないし、君に会ったら離れたくないって泣き言言いそうだから、一言だけ告げて、後は手紙に出張のことと、連絡先とか書いていたんだよ。会社から携帯支給されてたから、普段の携帯は契約休止してて・・・」
「えっ・・・?手紙?届いてないよ」
私は彼氏の言葉にびっくりして問い返す。
「そうだよ、今帰ってきてびっくりしたよ!僕のポストに君に送ったはずの手紙が戻ってきてるんだもの!!道理で君から連絡こなかったはずだよ。てっきり君に嫌われてしまったと思って、僕も連絡できなかった・・・」
「紛らわしいのよ!今までどれだけ悩んだと思ってるのっ!」
「本当にごめん、だけど、君に話すの辛くて、本当に好きだから離れたくなかったんだ・・・許してくれる?」
彼氏は私を抱きしめた。私は混乱する気持ちと、やっぱり彼氏のことが好きだという気持ちをいだいていた。
「・・・今まで辛かったけど、あなたのことはずっと好きだった。だから、許すしかないみたい」
私の言葉を、聞いて、彼氏は何度もありがとう、と抱きしめる。
「ちなみに、あの勿忘草の意味ってなんだったの?」
その後、家で、2人でお茶を飲んでいる時に私は聞いてみた。
「もちろん、永遠の愛、だよ」
彼氏の言葉に、私はせめてあの時言葉で言ってくれれば良かったのに・・・と思う。
「でも、今度出張の時はそんなことにならないように誓うよ。その時は君も連れて行くから」
「えっ、それって・・・」
私が質問しようとすると、その言葉は彼氏の優しいキスで塞がれてしまった。
2/3/2024, 5:10:59 AM