名無しの字書き

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――魂の重さは3/4オンス。

二十世紀にダンカンが発表したこれは、言葉だけが独り歩きしている。まあ研究方法が杜撰すぎるから独り歩きしている方がダンカンとしては幸せなのかもしれないが。
とはいえ、ダンカンが目をつけたテーマ自体は非常に面白い。魂の重さ、というとロマンチックに聞こえるが、要は人間が何を持って思考しているかということだろう。尤も、これは僕の持論であってダンカンが、または世間が考える魂とは異なるのかもしれない。

人間の脳はブラックボックスだ。脳のどの部位が何を司るかは解明できても、ニューロンがどのような作用をして僕らに"意識"を生み出しているのか、僕らはさっぱりわからない。もしその不明瞭な物を魂とするのならば、これの質量を調べるというのはとてもいいアプローチだと思う。

「それで、君は何をいいたいんだい? それと先輩には敬語を使い給えよ」

いやだね。授業をサボり校則を破って制服を着崩し法律を破り高校生ながら肺にヤニを溜めるセンパイのどこに敬う要素があるというんだ。僕は敬語の価値を下げたくない。だからセンパイに敬語を使うことはない。

「はぁ……こんなに美人な先輩の頼みなのになんだその言様は。まあ今に始まったことじゃないし、別にいいけどさ。さ、話を続けて。出来ればアタシがわかるように」

……僕たちが、何を持って思考をしているのか。魂とはなにか。魂の在り処はどこか。それを解き明かしたい。

「ふぅん? それはあの子の為かい? それとも別な理由?」

……別な理由だ。僕が人体に、脳科学に興味があり、脳のことをもっと知りたいと思っているから。ただ、それだけの理由だ。



「嘘つき」


センパイのその一言は、背を向けた僕の背に突き刺さった。

3/12/2024, 12:46:50 PM