地上には自分の居場所など、どこにもないような気がした。誰かと誰かが笑っている顔も、誰かと誰かが楽しそうに喋っている様子も、何もかもが羨ましくて嫌だった。
静かな場所で一人きりなりたくて、深い海の底まで落ちてみることにした。光も届かず音もない深海は、きっと孤独を求めようとする僕みたいな奴には性に合っているんじゃないかと思ったのだ。
そうして沈んでみたら、予想は裏切られた。
深海は怖いくらいに広く安らかさに包まれているように見えて、実際はとても冷たく苛酷な世界であったのだと知る。
どうやら僕の背に背負うには、海の底の水はひどく重すぎたらしい。
【海の底】
1/20/2023, 1:45:33 PM