かたいなか

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花束なんて、高校だか中学だか、ともかく●●年前の卒業式以来貰った記憶が無い物書きです。
買ったこともない心地。ただ●●年前と現代とでは、花の単価もだいぶ上がったとか。
なんてハナシは置いといて、今回のお題、花束のおはなしのはじまり、はじまり。

「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの地球規模にデカい難民シェルターの、寒帯エリアの雪原では、
人工的に調整された寒気と冷気によってもたらされた予定通りの積雪を利用して、
故郷の世界をなくした難民たちの主導で、雪まつりが絶賛開催中。

子供たちはもちろん、大人たちも、
スキーにボードに雪だるま、整備されたリンクではスケートなんかも、
皆みんな、楽しんでおりました。

で、「花束」のお題の回収です。
なだらかで安全な雪の坂道では、子供たちのソリレース、決勝戦がちょうど終了。
表彰式が為されておりまして、
みごと、栄誉の優勝のメダルとともに大きな花束を受け取っておったのが、
まさかの、大人の男性の管理局員でありました。

「ゆーしょー!わりゅーじんさま!」
「おめでとーわりゅーじんさま!」

わーわー!子供たちはパチパチ!
明るい笑顔で拍手を贈りますが、
拍手と花束とメダルを貰った管理局員はというと
完全に虚無、完全にチベットスナギツネ、
目のハイライトが多分迷子です。

「……」
なぜだ。 わりゅーじんさまと呼ばれた局員は、ポツリ言いました。

というのも全部の発端は数時間前でして。

…——『子供用のソリレース??』
数時間前、だいたい早朝の頃合いでした。
わりゅーじんさまと呼ばれた管理局員、実は本性が人間ではなく、ドラゴンでして、
難民シェルターの子供たちに、「悪い龍神様」、わりゅーじんさまとして、親しまれておりました。

なお別に龍神でも神様でも何でもなく、
管理局員としての名前、ビジネスネームを「ルリビタキ」といいますが、
まぁまぁ、その辺の細かいことは気にしない。

『わりゅーじんさまも、いっしょにやろうよ!』
子供たちは、わりゅーじんさまが大好き!
早朝に寝ているところを叩き起こして、
クレヨンでグリグリした手作り招待状を差し出し、
複数人の子供は既に、わりゅーじんさまの尻尾を引っ張って、連れて行こうとしています。
『いこう!いこう!ソリレース!』

わりゅーじんさまルリビタキは困りました。
そりゃそうです。自分と彼らのサイズは違います。
そもそもドラゴン用の大きいソリなんて、聞いたことがありません!
『用意したのか?作ったのか?』
わりゅーじんさまが聞きますと、
『ない!』
子供たちは当然のように、元気に答えました。

行こうよ!行こうよ!
子供たちは尻尾をぐいぐい!わりゅーじんさまを何がなんでも、連れて行こうとします。

『……』
ぐるるる、ドラゴンの頭をガンガンに働かせ、わりゅーじんさまルリビタキ、考えました。
子供たちの招待を断るのは、かわいそうです。
ですが、ドラゴンの自分が子供たちのソリレースに参加するのは、安全面から危険です。

ぐるるるる、ぐるるるる。
数秒考えて、わりゅーじんさまが出した妥協案は、
すなわち、「人間に変身すれば比較的安全」、
というものでした。

取り敢えず「自分の友人」という設定にしよう。

『俺は、これから仕事がある。
俺の代わりに、俺の友人、人間の男を連れてくるから、そいつをレースに出すと良い』
子供たちから十分に離れて、隠れて人間に変身して、子供たちの前に戻ってきた「わりゅーじんさまの友人」、ルリビタキは、

自己紹介しようとして数秒で、自分が「わりゅーじんさま」本人もとい本竜だとバレました。

「あのとき正直に断れば良かった……」

…——で、
なんやかんやありまして、
子供用のソリにカラダを押し込んで、ソリレースに出たわりゅーじんさまは、
結局優勝しまして花束贈呈。拍手喝采。

子供たちは嬉しそうでしたが、
花束を貰った本人は、どうにもこうにも、
虚無顔が数分、十数分、数十分かもしれません、
ともかく抜けませんでしたとさ。

2/10/2026, 6:29:05 AM